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Cake day: August 26th, 2023

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  • 第11話「Rôti(ロティ」……英語では「ロースト」にあたる言葉で、メインディッシュ。肉のローストですね。ぐんと話が進む回でした。

    冒頭、チルトンと食事中のレクター博士は「羊」の話をしつつ、ギデオン洗脳の件について会話をしている。「羊」といえばかの「羊たちの沈黙」を思い出すね。そしてウィルはというと、相変わらずの酷い悪夢に苦しんでいる。安眠が不可能な男、夢から覚めても夢の中という入れ子式悪夢は津波や溢れる水のイメージで、釣りやボートが関連してそう。とうとう現実にまで影響を及ぼし始める妄想及び空想、心象風景。

    今回最大の事件といえば、ギデオンの逃亡。逃亡中にもまた殺人事件は起こる。洗脳を受けた外科医ほど恐ろしいものはないと思うけれど、人間の舌をネクタイにするのは技だなあと妙な部分で感心してしまう。そうこうするうちに、ラウンズは捕らえられるし、チルトンは生きたまま腎臓を抜き取られるし、ギデオン無双状態。しかしウィルはウィルで幻覚と闘いながらも(慢性的にギデオンがホッブスに見えてしまっている)ギデオンを捕獲。いや本当、頑張ったよ……。しかし、そのギデオンを連れて行った先が悪かった。そう、ハンニバル・レクターの元へと……。

    ウィルに対して友情の可能性を感じていると、例の女医さんに語る博士、そろそろ「羊」を手に入れる頃合いなんだろうか。




  • 第10話「Buffet Froid(ビュッフェ・フロワ)」……英語だとコールドビュッフェ。冷たい料理を立食して楽しむみたいなニュアンスかと思ったら、殺害現場が寒いからなのか。

    季節はもうすっかり冬。吹雪が舞い散る中、若い女性が自宅で殺害される。ベッドの下に潜む犯人が女性を引きずり込むシーンは完全にホラーで、「死霊館」を思い出す……血飛沫込みでとても怖い。

    場面転換。レクター博士のカウンセリングを受けているウィル。近頃とみに精神不安定な彼に「時計を描け」と……この時計の絵がまた怖い。ウィル自身は真面目に描いているものの、実際は単針長針秒針も文字盤もめちゃくちゃで、これが認知の歪みか……と震えます(悲しいことによく分かるんだよなあ、この状態)。その他にも、釣ってきた魚を家でさばいていたら件の女性殺害現場にワープしていたり、この辺りから捜査本部の疑いの目がウィルへと向かってゆくのが辛い。

    で、レクター博士から紹介された脳神経外科医のもとへ行くウィル、MRI検査を受けたらかなり重篤な脳の炎症状態だった。早く……早く手当を……!しかし医者たちは結託しているので"何の問題もない"と言われ、ますます追い込まれてゆくウィル。ジャックの阿呆(ハンニバル役立たずコンテスト暫定1位)。

    で、ウィルが再度MRI検査を受けている間に脳神経外科医は惨殺。殺害したのは例の全身スーツを纏ったレクター博士。不利な証拠は全て隠滅してゆくやり方。罪をなすりつけられたのは今回の犯人。彼女はコタール症候群で人の顔の判別がつかない上に、免疫力が壊れているから皮膚もボロボロ、母親に見放されているし気の毒ではあった。そんな彼女をどうにか助け出したウィルは本当に偉かった。

    今回はホラーっぽい演出が多かった気がする。でも、何気に一番怖かったのはウィルの前に犯人がずるりと現れた挙げ句、捕まえようとしたウィルが腕をとったら手袋のように皮膚が剥ける場面だった……いやこれ、脳の炎症関係なく病むよね。こんな症状って実在するんだろうか。


  • 第9話「Trou Normand(トゥルー・ノルマン)」……蒸留酒(主にカルヴァドス)、もしくは小さなシャーベット。メインディッシュの肉料理に入る前の……?

    冒頭からある意味華々しく登場したのは人体タワー(死体のトーテムポールともいう)。シーズン1では最も印象的だった殺人現場でした。2の色見本のアレといい勝負。でも……このタワーを単独で組めるのかどうかというのが、気になって気になって仕方ない。当の人体タワー連続殺人犯に関してはとてもスムーズに片付く。シンプルに書くと、父親の息子殺し。

    ウィルの精神状態は輪をかけて悪化中で、海岸に居た筈なのにいつの間にかレクター博士の部屋にワープしたりしている。悪夢→幻影や幻聴→記憶の欠落というプロセス、他人ごととは思えなくて辛い。そんなウィルを、真綿で首を絞めるように導くレクター博士。生徒たちに講義を行っているかと思いきや、現実には講義室は無人だったりするので、アラーナもウィルには戸惑いを隠せない様子。気に掛けつつも彼の不安定さが障壁になって、友人止まりで居る事を選んでいるから、関係の進展も望めなさそうなのが哀しい……。

    一方、アビゲイルもひどい悪夢を見ており、追い打ちをかけるように社会的経済的な孤立状態になっている。そこに目をつける赤髪の小悪魔・ラウンズ。彼女の商売っ気は割と好きです。更に、アビゲイルが切り裂いて殺害してしまったニコラスの死体まで発見されて、事態は込み入ってくる。ウィルは単独で真実に辿り着き、博士と2人でアビゲイルの父親代わりとして共犯関係へ……この時点で、ウィルは両足を「向こう側」へ踏み込んでしまったのだと感じた。

    ラスト、父親の手伝いをしていた事を告白したアビゲイルを抱きしめるレクター博士。その時の台詞で気になったのは「真の怪物を知ってる」。これはホッブスの事ではない。そう、恐らくそれは……。


  • 第8話「Fromage(フロマージュ)」……チーズ。美味しいよね、チーズ。乳製品全般が好きなので食べたくなる……。フランクリンがチーズ屋さんでレクター博士を見掛けたとか何とか言ってたな。人肉以外の素材調達も欠かさない、それがハンニバル・レクター。

    弦楽器に必要不可欠な弦を作り中のトバイアス。そういえば鯨の髭で作られた弓は高級だったっけ。高級といえばストラディバリウス……レクター博士が弾いたら似合いそうです。……脱線。トバイアスは人間の声帯を弦にした楽器を創る為に殺人を犯しているサイコパスで、レクター博士を仲間だと認識して近づこうとしている。何も知らないフランクリンはそんなトバイアスを友人としつつも怯えたおり、その上でレクター博士に友情を一方的に求めている。なかなかディープに発狂した三角関係が出来上がっている。更に、現状レクター博士が友情の可能性を感じて相手はウィルだけで、そのウィルはアラーナとどうにか距離を縮め、今回は何とキスまで交わしている。さあ、盛り上がってまいりました(水面下で)。

    ウィルは相変わらずで、ホッブスの幻影を見たりしながらも操作を進めてゆくし、レクター博士にも協力をあおぐ。今回の殺人は猟奇性が「チェサピークの切り裂き魔」に似通っているから、彼にとっては悩みどころかもしれない。そして、レクター博士は例の女医さんにウィルとの友情の可能性の件や女医さんが過去に患者に襲われた件などを話していたりして、伏線がちらほら見える……。

    トバイアスの店に警官を伴って出向くも、トバイアスの方が一枚上手。警官2名を殺害し、ウィルも殺されかける。危ないところをウィルが銃で反撃。負傷したトバイアスは逃走し、レクター博士のもとへ。しかし彼らに相互理解など全く存在しないので、本気の殺し合いへと発展。ここ!ここで本作初のレクター博士のアクションシーンが拝める。気品のある滑らかな動きといい、あくまでも優雅な攻撃や防御といい、激しめの動きで垂れ落ちる前髪といい、素晴らしい。「マトリックス」がエンターテイメント的アクションだとすれば、「ハンニバル」のアクションは芸術的アクションとでもいうか。……しかし、鬱陶しいだけで特に何もしていないフランクリンの首をサッとへし折る博士はちょっと面白かった。余程嫌いだったんだろうなあ、気の毒なフランクリン……。

    最後、ウィルが負傷したレクター博士に「僕の世界に引きずりこんでしまった」と謝ったけれど、それは全く真逆なのが良いと思う。


  • 第7話「Sorbet(ソルベ)」……氷菓。コース料理で出される口直し。ここがシーズン1の折返しで、重要人人物はほぼ出揃った感じかな。

    ウィルは「チェサピークの切り裂き魔」の行動を読みながら追っているけれど、大体当たってる。優秀だけれど、どんどん病んでいっているのが痛々しい。

    で、この話で第1話にもちょこっと登場していたフランクリンが関わってくる。この男はあれだ……レクター博士と親友になりたがっていて、距離感がバグっている困った人。そんなフランクリンを明らかに煙たがっている博士の表情と塩対応が面白い。オペラ鑑賞で、フランクリンは友人(という事になっている)トバイアスを博士に紹介する。トバイアス……これもまた中々凄まじいキャラクター。

    一方、ジャックもミリアムの件が堪えている様子で悪夢を見たりしている。そんな中、新たな殺人事件が発生。浴槽で発見された遺体には心臓マッサージをダイレクトに施された跡が。そこから犯人を特定してゆくという流れ。犯人は救命医だったのだけど、殺されかけた男をレクター博士が助けるシーンもあって、二律背反的。

    そして、この回でも重要人物が登場。レクター博士の主治医の女医さん、つまり博士は患者。そして、この女医さんはなぜか博士を深く理解している。博士にとって彼女は特別な存在であって、フランクリンが博士を特別な存在だと認識しているのと構造が似ている。

    この第7話はレクター博士の殺人シーンがリアルタイムで初めて描写された回でもある。レシピカード集もとても良い。臓器を調理するシーンでひたすらオペラBGMが流れているその優雅さが素晴らしい。BGMって大切だ。

    「孤独」に関してフランクリンと会話をしたのち、予約時間になってもウィルが自室を訪れない事を気に掛けるレクター博士、この時の表情はまさに「孤独」を感じていて、僅かに冷静さを欠いているように見える。完璧でありながらも未完成な状態のハンニバル・レクターという人物像が垣間見える。ウィルの精神症状は悪化の一途を辿っているけれど、そんな中でも犯人像を見出そうとするのが哀しい。

    そして開かれる、オペラ歌手たちを招いての食事会。振る舞われる料理はそのすべてが人肉製。場に溶け込めずに帰ってゆくウィルが何だかいとおしく感じられる……。



  • 第6話「Entrée(アントレ)」……魚と肉の主菜の間に出される軽い料理。メインディッシュの前の一皿で、そろそろシーズン1の折返し地点。

    重要人物その1・ギデオンが初登場。"チェサピークの切り裂き魔"として服役中の身でありながら看護師を惨殺する。現場に駆り出されてプロファイルをする我らがウィル。目玉くり抜きシーンの狂気に満ちた表情は見どころかと思われます。

    続いて、重要人物その2・チルトン医師も初登場。彼はレクター博士の昔馴染み。レクター博士と洗脳に関する会話も交わしたり、意味深。こいつは絶対悪徳医師だ。

    更には、重要人物その3・ミリアムも初登場。ジャックの回想で、彼女は2年前に"チェサピークの切り裂き魔"を捜査している途中で行方不明になってしまった訓練生である事が明かされる。

    そんなミリアムから、繰り返しジャックの元へかかってくる電話。「私は間違っていた、助けて」と……ベラの件もあってジャックの精神状態もよろしくない。レクター博士の元を訪れるものの、涙を流したりする。ややあって、ジャック宛ての携帯電話の位置は特定したものの、そこに置かれていたのは切断された腕と携帯電話のみ。ミリアムの遺体は未だ見付からず……。

    ここで、挟まれるレクター博士側の回想シーン。自宅を訪れたミリアムが惨殺遺体そのものな猟奇的な絵を発見してしまった事で、レクター博士がミリアムを手に掛けたという事が判明。2年前にはもう全てが始まっていた、と。ウィルと出逢っていてもいなくても、レクター博士のやり方は何ら変わりないのがよく判る。流石。

    アラーナを交えながらの食事シーン。その料理に使われている食材は「舌」。レクター博士は"お喋りな子羊"だと言っていたけれど。そうだね……。そして、ギデオンを取材したラウンズの書いた「チェサピークの切り裂き魔」に関する記事を読んでいるレクター博士。あの、何を考えているのか全く読めない表情と、独特のリズムを刻んでいる指先がいい感じだった。メインディッシュの前、みたいなね。



  • 第5話「Coquilles(コキーユ)」……貝殻に盛り付けた料理を呼び習わす。貝殻は開くものなので、殻の中に居るウィルを暗示しているのかどうか。

    冒頭。精神状態が悪化中のウィルは、悪夢のみならず夢遊病を発症し、夜の道路をさまよって警察に保護されたりしている。そんな彼を心配したウィンストン(愛犬)が後をつけてきているのが何とも。眠っている間に屋根の上に立っていたりもするので、危うい。本人も危機意識を抱いたのか、早朝からレクター博士のもとへ。PTSDを指摘されるウィルはやはり何かしら傷を負っているのだろうな、両者とも生まれ育ちにある種の因子があるし。

    「チェサピークの切り裂き魔」を追ううちに、次の殺人事件が発生。そうです、あの『ヴァイキング』に出てきた処刑法「血の鷲(blood eagle)」で殺されている被害者たち。犯人は脳腫瘍患者で処刑を行っている。血の鷲は天使を模したもの。そして天使には性別が存在しないので性器を切り取ったりと中々にえぐい。不眠続きのウィルも目を覚ますレベル。ややあって犯人を特定するものの、犯人自体が血の鷲状態で発見されるという後味の悪さ……。『ヴァイキング』視聴後だと更に味わい深いな。

    その一方で、犯人像を通してジャックがようやく妻ベラの病気に気付く。ステージ4の肺癌である彼女はレクター博士のもとへ通っていて、ジャックを遺してゆく事が耐えきれない。病によってすれ違う夫婦は悲しい……。ラストで弱っているジャックの隣に腰掛けて傍に居るウィル。

    本当、ウィルは優し過ぎるんだ……割と散々な扱いを受けているのにね。前回もアビゲイルにクリスマスプレゼントを用意したりしていたし、優しいんだよな。優しさの中に殺人衝動が潜んでいて、それを巧みに引き出そうとしているのがハンニバル・レクターであるという話なんだよね。

    ……余談だけど、寝起きのガウン姿で前髪を下ろしているレクター博士はずるい。スクショを撮って切り抜いて自前で博士の写真集を作ろうかと一瞬だけ考えてしまった。さすが北欧の至宝。




  • 第4話「Œuf(ウフ)」……卵料理。まだ孵化していないウィルを示しているような気もするし、今回登場した子供たちを指しているような気もする。

    手作りソーセージ(人肉)を片手にウィル宅に勝手に忍び込んでルアーに細工をする男、ハンニバル・レクター。用意周到で半端ない。前回の石ころ隠しといい、凄まじい先回りだ。

    家族関係が首軸になるエピソードで、ようやく少しだけ明かされるウィルやレクター博士の過去の断片。ウィルの父親はボート整備の仕事をしていて、貧しい父子家庭育ち。レクター博士は家族と死別している孤児院出身者(妹の存在はまだ明かされていない)。人間の精神構造を形作るのは家族関係であると常日頃から思っている私にとっては、感慨深い断片情報だった。レクター博士がウィルに投げかける質問は、質問のように見えるけれど、実際には誘導なんだよね……この手腕。あと、今回も博士のスーツ姿は総じて格好良かった。

    揺れる振り子と共に、今回の事件は少年たちを洗脳して疑似家族を作って殺人を犯させている女性が犯人。少年たちは本当は皆いい子ばかりなんだけど、機能不全環境に置かれているせいで、いとも容易く洗脳されてしまっている。これは身につまされるし辛いですわ。

    さて、前回アビゲイルを手中におさめた博士だけど、怪しい催眠キノコ紅茶的なものを使って更にアビゲイルを捕縛しようとしている。そんなアビゲイルの扱いに困っているアラーナは、博士に怒っていたりする。アビゲイルが見た幻覚が父ホッブスと母の居る食卓だったのは悲しい……食卓って、家族を象徴する場だものね。

    ラストで、ジャックの妻のベラが登場。子作りの件をジャックから聞くも、顔を曇らせる。そうだった、彼女には夫に言えない秘密がある。ジャックにはジャックの苦労があるのだよね。

    ボート職人をしながら釣りを楽しみつつ犬たちを可愛がって穏やかに暮らしているウィルの姿を想像してみると、ちょっとだけ泣けると思います。





  • 第2話「Amuse-Bouche(アミューズ・ブーシュ)」……一口のお楽しみ。食前酒に添えて出される料理。 ここから例の"短いけれど印象的なOP"が始まる。血で象られたジャックとウィルとハンニバル、このOPは心に残る、とにかくインパクトが強い。

    本格的にウィルが病み始めるのはここからで、ホッブスを弾丸10発連射で殺害してしまった事が堪えているウィルが安定の幻覚を見始める。作品内での本領発揮という感じ。まんまとレクター博士の手のひらで踊り始めている……。

    この頃からウィルとビヴァリーはFBI捜査本部内ではいい関係性で、仲が良い。ビヴァリーの方が面倒見もいいし、彼女はアラーナよりもウィルの良き理解者だったような気がする。それだけに、シーズン2でのビヴァリーの顛末を思うと……脳裏を過る人体スライス。同時に「ザ・セル」を思い出してしまう。そういえばどちらも映像美作品でした。

    ウィルのメンタルケアがレクター博士に一任されて、あの素晴らしい書斎でのカウンセリング開始。ソファで向かい合っている2人が結構好きだったりする。暖炉の炎や部屋の照明が美しくて、見ていると落ち着く。レクター博士の言葉遣いや言い回しに落ち着きがあるからなのか。一方グラグラなウィル。現時点ではまだ普通のクライアントと変わりない感じなのかな?

    そして、人体キノコ栽培事件発生。絵面がなかなか面白いというか、あの状態で生きてる人間が居たのが驚き。犯人のターゲットになりかけたアビゲイルをちゃんと助けたウィルは偉かったね……。菌糸と繋がりに関する話を持ち出して、ウィルを理解したつもりになっている犯人のサイコパス振りも怖いけど、その後に殺人衝動の話をウィルの口から言わせるレクター博士の方が余程恐ろしい。いいぞ、その調子だ。

    余談だけど、博士は今回のブルー系のスーツもお似合いだった。この人、いつもポケットにハンカチを入れているし、部屋も台所も綺麗。きっちりしてらっしゃる……世界一ハンカチが似合う紳士だと思う。

    それにしても、2話目にしてジャックのNGさが目立つかも。ウィルをレクター博士に預けて、談笑しながら人肉料理を食べている場合じゃないのでは。


  • 第3話「Potage(ポタージュ)」……スープ。ここからがメイン料理ですね。余談だけど、私はコーンやかぼちゃのポタージュが好きです。更に余談だけど、日本ではスープ類のうち、とろみのついたものをポタージュ、澄んだものはコンソメと呼ぶらしい。ふむふむ。

    ホッブス&アビゲイル父娘の鹿狩猟シーンからスタート。昏睡状態から目覚めたばかりのアビゲイルは母親の死と父親の射殺を知ったものの、とても落ち着いているように見える。アラーナ曰く「ショックが大き過ぎる」。でも、多分そうじゃない。父親の異常性と罪悪感のはざまで揺らいでいるような印象。そんなアビゲイルの元を訪れるウィルとレクター博士。温室での会話シーンは、ウィル自身のホッブス射殺に対する感情をアビゲイルを通して見ているような気持ちになる。

    今回は特にレクター博士の表情というか、目の動きが本当に良かった。「多くを語らずに全てを見ている」表情。この辺りの演技が上手過ぎると思うんだ、マッツ・ミケルセン……。

    そしてラウンズ。この人の赤髪とキュートなお顔が好きです、服装のセンスも良いし。ジャーナリスト魂逞しい彼女のお陰で、ニコラス(連続殺人被害者少女の兄)はアビゲイルに近寄るけれど、アビゲイルの優しい友達に「あっち行け」とばかりに石を投げられたりして、ちょっと気の毒。そして、ニコラスの血が付着したその石を爪先でサッと隠す博士。うわあ……うん……。実際には、ニコラスの妹は連続殺人被害者というよりはレクター博士の手による"ミネソタのモズ"の被害者。ウィルだけが犯人を読んでいるものの、今まさに肩を並べている紳士的な精神科医兼外科医が真犯人だとは気付かない。今回はソファで向かい合うシーンは無し。

    そして起きる殺人事件。アビゲイルの優しかった友達が、小屋の2Fで惨殺されている。鹿の角に全身を貫かれて、遺体にはニコラスの血痕。傷心のアビゲイルが自宅の居間で「命を無駄にしない」ホッブスが手作りしたクッションをナイフで切り開いたら、大量の髪の毛がワサワサと……そりゃあ驚くよね……そこへ、間のいいことにニコラス登場。パニックになったアビゲイルは、ニコラスを殺害してしまう。しかもレクター博士が言うところの「正当防衛ではなく惨殺」という形で。追い詰められて狩りの癖が出てしまったとも考えられるけど、判断が難しいな……。博士の助言でアビゲイルは偽証することになってしまう。全てが仕組まれた用意周到な舞台だ。

    ウィルの悪夢は今にはじまった事ではないのだろうけど、徐々に悪化している。共感力云々の前に「この男は一体幼少時に何を経験したんだろう?」と考えてしまう。だから言ったじゃないですか、シーズン7まできっちり制作して、過去とかその他をもっともっと見せて魅せてくれれば良かったのにと……!


  • 第1話「Apéritif(アペリティフ)」……食前酒。ここから始まるレクター博士の美しくも残酷なコース料理。ここから始まるウィルの儚くも凶暴な殺人衝動の協奏曲。北欧の至宝マッツ・ミケルセンといまいちマイナーなヒュー・ダンシーの演技力も素晴らしい。俳優さんもシナリオも演出もBGMもパーフェクトな作品だと思う。

    初っ端から殺人事件現場に呆然と佇むウィル・グレアム……飛ばしているなあと思います。第1話ではあの特徴的なOPはないけど、入りは本当に良い。

    観ていて思ったのは(以前書いたテキストを間違って削除してしまったからまた観直して書き直しだよこのやろう)、ウィルの運命を変えてしまったのは、ハンニバル・レクターではなくむしろジャックなのではないだろうかという事でした。ジャックがウィルをFBI捜査本部に引っ張り込んだ上に深入りさせたんだよね、アラーナはジャックを牽制していたのになあ。

    若い女性の連続行方不明事件に関わる羽目になったウィルは、プロファイリングで犯人の心理を探ってゆくのだけど、殺人者への理解力の高さはホッブス銃殺前から既に気質として持っている。満を持して協力者としてのレクター博士が登場するのだけど、あの素晴らしい書斎(カウンセリングルーム兼)に患者として居たのが開けてびっくりフランクリン。この人、第1話から登場していたのか。やっぱりあれだな、好きな作品を2周するのは気付きが多くて最高だ。そして、「ミネソタのモズ」事件発生。犯人は……いや、うん……。

    レクター博士がウィルに朝食の差し入れ(人肉ソーセージだと思われるものが含まれているのが気にかかる)(2週目万歳)。最初から妙に距離感が近い2人。この距離感のバグが、レクター博士にとっても想定外の事態であるのが、関係性の魅力の部分。

    金属片から女性連続行方不明事件の犯人をホッブスだと突き止めた辺りの、レクター博士がホッブス宅に「バレてる」と電話をかけた際のスマートな一連の動作が素晴らしい。指を折り曲げてボタンを押しつつティッシュで使って受話器を持っている……さすが防護服を纏った完璧な猟奇殺人犯(褒め言葉)。

    そして、ホッブスを射殺してしまうウィル。何度も何度も撃つ。ウィルの中に潜んでいた殺人衝動の発露シーン。アビゲイルを助けたのはレクター博士。と、ここまでがプロローグ。

    犬に囲まれているウィルの姿を改めて見ると、哀愁を感じる。ウィンストン(犬)、可愛いね……。